取材・記事制作:テクノグラム株式会社

セブンフィルム株式会社代表・谷健二氏に聞く|エンタメ部署で採用力を上げる。映画監督が描く企業×役者の未来

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会社名セブンフィルム株式会社
代表者谷 健二
事業内容映画・舞台・書籍の企画制作を手がけ、一つの作品を複数のメディアに展開。若手俳優の支援サービス「ACTORS BASE」も運営
設立2017年6月
所在地東京都渋谷区神宮前4-1-17-202
URLセブンフィルム株式会社

セブンフィルム株式会社は、映画監督の谷健二氏が率いる、映画・舞台・書籍の制作会社です。
谷氏は、博報堂グループの広告代理店に約10年勤めた後に独立し、独学で制作を重ねてきました。
現在は、大手事務所に入れなかった若手役者を支える「ACTORS BASE」を始動しています。
本記事では、役者の育成とともに、企業にエンタメ部署を設けて採用力を高める構想について、谷氏に話を聞きました。

目次

広告代理店で約10年。独学で映画の世界へ踏み出した理由

谷健二氏は、広告代理店での会社員生活を経て、映画の世界で勝負するためにセブンフィルムを立ち上げました。
映画づくりの技術は、学校にも師匠にも頼らない独学で身につけたものです。

代理店時代の担当は、自動車会社のWebマーケティングでした。
閲覧した広告が再び表示される「リターゲティング広告」など、当時最先端の手法に挑戦していたといいます。

のぞクマくん
映画は、もともとお仕事とは別の趣味だったんですか?

谷さん
仕事とは基本全然リンクせず、マーケティングの中でも営業と制作がメインなので、本当に趣味でって感じですね。

趣味で撮った自主映画が国内外の映画祭で上映され、やがて長編映画のオファーが届きます。
谷氏は会社に勤めながら、有給休暇を使って長編『リュウセイ』を撮影しました。
テレビで見ていた俳優と初めて本格的に仕事をし、「覚悟ができた作品」だと振り返ります。

谷さん
当時37とか8ぐらいなんで、会社で出世を目指してマネジメント層に入っていくのか、現場で頑張るのかっていうタイミングになって。だったら1回ちょっと映画の世界で勝負してみようみたいな感じで作った会社なんですよね。

のぞクマくん
どなたかの下について、修業されたことはあるんですか?

谷さん
助監督とか、舞台でも演出助手とかもやったことないんで。基本はもう学校も行ってないし、その誰かの下にもついてないです。

のぞクマくん
独学で劇場公開作を何本も撮るのは、業界でもかなり珍しいことなんですね!

レンタルビデオ店でアルバイトをしていた頃には、年間400本ほどの映画を観ていたそうです。
その蓄積が、独学を支える土台になりました。

映像・舞台・書籍の3本柱で一つのIPを育てる

セブンフィルムは、映像・舞台・書籍の3つを自社で手がけ、一つの作品を複数のメディアに展開しています。
IP(知的財産)を自社で育てられることが、同社の強みです。

コロナ禍の悔しさから生まれた自社の舞台

舞台を始めたきっかけは、映画に出演した役者に誘われて観劇したことでした。
演出が仕事の映画監督なら舞台もできるのではと考え、約10年前から手がけています。

コロナ禍には、受託した舞台が途中で中止になりました。
その悔しさから自社で立ち上げたのが、舞台『ハイスクール・ハイ・ライフ』です。
歌やダンス、ゲームコーナーを盛り込んだエンタメ舞台は、大きな手応えを得ました。

のぞクマくん
映画、舞台、書籍と、本当に幅広く手がけていらっしゃるんですね。

谷さん
小さい会社ながらも、IP化というか、本も作れるし、舞台もできるし、映像もできるみたいなとこを売りにしてやっていますね。

実際に、自社で開発した書籍『イケないマネジメント術』は、ショートドラマ化を経て、今年舞台化されました。
谷氏自身の役割は、企画から完成までを統括する立場です。

谷さん
表向きには監督や演出といってますが、もう全部やっちゃってるんで、プロデューサー兼監督兼製作会社の社長みたいな感じだと思いますね。

「安く作った」を自慢しない理由

谷氏は、作り手に正当な対価を払うことを大切にしています。
コロナ禍に助成金600万円を得て制作した『追想ジャーニー』では、こだわり抜いた結果、高い評価を得ました。

谷さん
普段はいろんなしがらみの中で制作してるんで、そういった意味で言うと、自分の中の1つの指標になったような作品ですかね。

のぞクマくん
「低予算でヒット」という話はよく聞きますが、どう見ていますか?

谷さん
簡単に言うと、みんなのギャラが安くなるだけなんですよね。低予算で作ってますっていうのは、誰かが泣いてるんだと思った方がいいと思いますね。効率よく撮影するってのはかっこいいことなんですけど、安く仕上げるってことは、どこかで誰かが不満を言ってるはずなんで。もちろんアイデア勝負の作品もありますが、制作予算はあまり鵜呑みにしないようにしています。

のぞクマくん
「安さ」の裏側に、誰の負担があるのか。どの業界の経営者にも刺さる視点ですね。

16歳で大手に入れなかった役者に「売れる方法」を教える

ACTORS BASEは、大手事務所に所属できなかった若手役者に、出演機会・知識・キャリア支援をまとめて提供するサブスク型の支援サービスです。
谷氏は、事務所に入るまでの「予備校」と位置づけています。

谷氏は自主映画の時代から約20年、業界に関わってきました。
その間に出会った役者は、3000人近くにのぼるといいます。

10代から問われるプロ意識

若手男性俳優が出演する舞台を手がける中で、谷氏の周りには20歳前後の役者が多く集まりました。
しかし、その多くはアルバイトをしながら活動しており、生活は楽ではありません。

谷さん
でも僕が思うには、みんなすごく優秀なんですよね。セリフを覚えて、それを表現しなくちゃいけない。宣伝ではSNSを駆使して、中には配信で直接ファンと話している者もいる。さらには現場では大人と会話しなければいけない。普通の環境だと25歳ぐらいで学ぶようなことを、やっぱ18歳くらいからできないと淘汰されていく業界なんですよね。

のぞクマくん
20歳から役者を目指すのでは、もう遅いということですか?

谷さん
当な逸材でないかぎり遅いと思います。高校から野球やサッカーをやるかんじでしょうか。なるべく早くをおすすめします。

ACTORS BASEが提供する5つの支援

ACTORS BASEでは、フリーの若手役者がつまずきやすいポイントを、次の5つの支援で補います。

支援内容概要
オーディション情報事務所に所属していないと届かない情報を提供
リスクマネジメント契約の注意点の共有、トラブル時の弁護士紹介、悪質な事務所の見極め
ワークショップ谷氏が最低限必要な演技の基礎を指導
現場案件の紹介エキストラやイベントスタッフなどの現場を提供
キャリア支援転職・副業・スキル習得のサポート、知人企業の紹介

谷さん
みんな結局子供すぎて、どうやったら売れるのかってこと自体が分かってないんで、それをもうちょっと僕らが噛み砕いて教えてあげたいっていうのがある。

のぞクマくん
事務所でもエージェントでもない、ちょうど間の存在なんですね。

谷さん
高校生が大学に入る前にここに登録しといたら情報を教えてあげるよみたいなかんじでしょうか。事務所機能(マネージャーをつけたり売り込んだり)は今のところ持たないので、自分でいろいろとれ経験して、いい事務所に入れればそれでいいと思ってるんですよね。

現在はまだ料金を取らず、緩やかに運営しています。
すでに多くの役者が集まっており、現状はオーディションやエキストラの案件を紹介しています。

学歴では測れない人材を、企業の採用につなげたい

谷氏は、学歴や職歴では評価されにくい元役者の中に、企業で活躍できる優秀な人材がいると考えています。
ACTORS BASEを通じて、役者という肩書きのまま企業に採用される道をつくりたい考えです。

のぞクマくん
企業の側は、ACTORS BASEとどう関わることができますか?

谷さん
今のリクルート事情って結構その学歴だけで弾かれちゃうじゃないですか。でも俳優の中には、ものすごい優秀な子っているんですよね。学歴など世の中の仕組みからは外れちゃうんだけども、実は優秀な子っていうのを、なんかもっと役者って肩書きのままで採用して欲しいなって感じはしますね。

この考えの背景には、谷氏自身の経験があります。
博報堂グループには派遣社員として入社し、そこから正社員になりました。

谷さん
いろいろと苦労もありましたが、新卒では到底入れる環境ではなかったので、学歴ではないところを評価してもらい正社員になれたと思っています。

のぞクマくん
学歴のフィルターでは見えない力がある、ということですね。

エンタメ部署が新卒採用の武器になる

谷氏はさらに、企業の中に「エンタメ部署」を設ける構想を描いています。
エンタメへの憧れを、企業の採用ブランディングに活かす発想です。

谷さん
新卒の採用とかってどこの会社も毎年多くのお金を使いますよね。そのうちのいくらかをエンタメ部署の設立にあてればいいと思っています。自社で何かを作ってもいいし、エンタメ業界の人を呼んで講演会をしてもいいし、何かと接点を作る。学生からしてみたら社内にそういう部署があるだけで魅力的に映ると思うんですよね。

のぞクマくん
「この会社、面白そう」と思わせるきっかけになりますね。採用に悩む経営者には、新しい選択肢だと思います。

企業がエンタメを取り入れる方法として、谷氏は次のような関わり方を挙げています。

  • 元俳優を採用し、SNSでの商品紹介などに力を活かしてもらう
  • 俳優を招いた講演会やSNS発信で、エンタメ部署を形にする
  • 経営者自身が撮影に参加し、エンタメの現場を体験する

谷さん
エンタメ自体を会社の中に取り入れちゃえば、多分ブランド価値というか、その新卒とか中途採用に関しては、すごく効くような気はしますけどね。こちらも制作して収益を得るだけでなく、企業さまをエンタメ部門でサポートすることでこれまで培ってきたことが活かされると感じています。

映画・舞台を育てながら、エンタメを別軸の事業へ

谷氏が描く5年後は、映画・舞台事業の拡大と、エンタメを本業以外で収益化する新事業の両立です。
10年かけて積み上げた人脈と信頼が、その土台になっています。

独立後に最も苦しかったのは、コロナ禍でした。
当時は飲食店も経営しており、エンタメと飲食の両方が止まりました。
その飲食店も昨年手放し、今は経営者との交流やセミナーに時間を使っているといいます。

のぞクマくん
10年続けてきた今、どんな手応えを感じていますか?

谷さん
最初は本当にがむしゃらにやっていました。そこから何ができて何ができないかがわかってきて、最近では変化する怖さもなくなりました。スポーツでいう心技体ではないですが、製作会社としていろいろなものが揃ってきた感じはあります。

のぞクマくん
続けること自体が、大きな価値になっているんですね。今後のビジョンも教えてください。

谷さん
まずはやっぱり今やっている映画とか舞台の事業を大きくするっていうのが1つと、それとは別軸で、俳優の環境を整えたりとか、社会・会社の中に入ってエンタメ事業を推進したりみたいなことですね。エンタメを本業じゃないところで収益を上げていきたいっていうのが、1つの5年以内の夢というか。

ACTORS BASEのようなサブスク型サービスや、企業へのエンタメ導入は、毎月安定した収益を見込めるビジネスモデルです。
映画・舞台という本業の強みを、別の形で社会に届ける挑戦が始まっています。

編集部まとめ

今回の取材で印象的だったのは、谷氏が「安く作ること」を誇らず、関わる人への対価を大切にしていた点です。
その姿勢は、売れない俳優の将来を本気で考えるACTORS BASEにもつながっていると感じました。

  1. セブンフィルム株式会社は、映像・舞台・書籍の3本柱で、一つの作品を複数のメディアに展開している。
  2. 谷健二氏は、博報堂グループの広告代理店に約10年勤めた後、独学で映画監督としてのキャリアを築いた。
  3. セブンフィルムは、大手事務所に入れなかった若手俳優を支えるサブスク型サービス「ACTORS BASE」を運営している。
  4. 谷健二氏は、学歴では測れない元俳優の力を、企業の採用に活かしてほしいと考えている。
  5. 谷健二氏は、企業内にエンタメ部署を設けることで、新卒・中途採用のブランド価値を高められると考えている。

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