30歳で独立、65歳でセミリタイア。税理士・清水努の一貫した計画経営

  • URLをコピーしました!
会社名税理士法人 C Cube コンサルティング
代表者清水 努(代表社員)
事業内容中小企業経営者への税務・会計サポートおよび経営参謀型コンサルティングを展開。通常の会計処理から経営参謀役まで、お客様に寄り添うサービスを提供
設立1996年8月
従業員数総勢46名(正社員32名/パート14名)うち税理士9名、税理士試験受験者18名
所在地東京都中央区銀座5-14-10 第10 矢野新ビル8F
URL税理士法人 C Cube コンサルティング

税理士法人 C Cube コンサルティング代表社員・清水努氏は、21歳で業界に入った日から「30歳で独立する」という計画を立て、ほぼ予定通りに実行した人物だ。
創業から約30年、採用・育成・組織承継にわたる自身の試行錯誤を赤裸々に語ってくれた。計画を愚直に実行し続ける経営者の頭の中を、のぞきにいこう。

目次

21歳から描いた設計図——30歳独立までの9年間の修行

清水氏は21歳で専門学校を卒業し、税理士業界に飛び込んだその瞬間から、独立のロードマップを描いていた。「30歳で独立しよう」という目標から逆算し、9年間を3社・3年ずつの修行期間と定め、ジャンルの異なる事務所を渡り歩く計画を立てたのだ。

のぞクマくん
独立を決めたのは業界に入った瞬間から、ということですか?
清水さん
21歳で仕事を始めて30歳で独立を目指したので、9年間ある中で1か所に3年ずつ、3か所行こうかなと。ジャンルの違う事務所で色んな修行というか勉強をして、30歳で独立しようって思って始めたのがきっかけで、ほぼ予定通り30歳で独立をしました。
のぞクマくん
計画が予定通りに進んでいるのがすごいですね!
清水さん
私、結構物事を決めて動くのが好きなんですよ。もう性格でしょうね。

この「決めたら動く」という性格が、その後の経営においても清水氏の一貫したスタイルとなっている。銀座で1996年に創業した事務所は現在、銀座・池袋・神田・立川の4拠点、総勢46名規模にまで成長した。

二つの大危機——最大顧客の自ら離脱と、42歳のICU入院

順調に見えた経営の歴史には、清水氏が「二大やらかし」と呼ぶ、2つの大きな転機があった。

1つ目は、独立5年目頃の出来事だ。年商3,000万円台、スタッフ数人という時期に、売上の3分の1を占める最大顧客と別れた後、“既存のお客様たちから複数のお客様をご紹介いただいて、1年以内に失った分をほぼ取り戻した。

のぞクマくん
売上の3分の1って相当大きな出来事ですよね。
清水さん
さすがにちょっと焦りました。お恥ずかしい話ですが、その時に唯一カミさんに生活費をちょっと下げてって言って。人生で一回だけ下げました。まあ後で上がりましたけども(笑)

2つ目の危機は、39〜40歳頃に始まった。当時15人規模だった事務所が別の事務所と合併し、一気に20数名体制となった。「これから100人を目指そう」と意気込んでいた矢先、2年間の合併生活でかつてないほどのストレスを感じた清水氏は、自ら合併解消を決断。単独での再出発を選んだ。
そして42歳の年末、さらなる危機が訪れた。12月29日の夜、家族で食事をして就寝した清水氏は、翌朝になっても起きてこなかった。部屋を開けた娘が目にしたのは、全身痙攣し白目を剥いた父の姿だった。ICUに運ばれた清水氏が目覚めたのは、元旦の昼過ぎ——48時間後のことだった。

のぞクマくん
48時間、目覚めなかったんですね。それは…壮絶な経験ですね。
清水さん
お医者さんはうちのカミさんに、このまま目が覚めないか、目が覚めても半身不随ですよって。それ、やばいよね。ところが、私は多分強運だったんでしょうね。心臓がやっぱり強かったみたいで、当時心臓は止まらなかった。それでパッと目覚めて。
のぞクマくん
目覚めた時、状況をどう把握されたんですか?
清水さん
家で寝てると思ってたから、なんで!?誰が縛ってんだろうと思ったら病院だった、みたいな感じでしたね。

当時の清水氏は、全従業員の業務チェックを自分1人でこなし、銀座で飲んだ後も事務所に戻って夜中まで仕事をするような生活を何十年も続けていた。入院中に事務所を2週間空けてみると、「意外と何とかなってしまった」
この経験が清水氏の経営スタイルを根本から変える転機となった。

清水さん
やっぱり人は信じるもんですよ。学びです。

リーダー格3名のうち2名がOKを出せば承認できる仕組みに変えたところ、これが上手く機能した。「人に任せる」という発想への転換は、その後の組織づくりの哲学に深く刻まれている。

採用基準の変遷——時代の変化と新卒採用への転換

採用については、清水氏自身が「ちょっとぶれてる」と笑いながら語るほど、試行錯誤の連続だった。買い手市場だった時代から売り手市場へと環境が激変する中で、採用基準は大きく変わってきた。

かつては募集広告を出せば何十人もの応募があり、「私とフィットしそうかどうか」「元気かハキハキしているか」で採用を判断できた。しかし、時代は変わった。
現在は複数のエージェントに依頼しても採用が難しく、条件を見直しながら対応してきた。

のぞクマくん
そんな中で、新卒採用にも踏み切ったんですよね。
清水さん
本当は中途でまず固めてから新卒採用しようと思ったんですが、それを待っていたら永遠に人も増えないなと。なので、うちで何年も勤めているスタッフ何人かに、もう中途だけでは難しいから、新卒に切り替えようと話して、4年前に新卒採用をスタートしました。

新卒採用に切り替えた後、清水氏が辿り着いた一つの基準がある。「真剣に税理士を目指す人」を見極めるための、より具体的な物差しだ。

清水さん
理想はね、学生時代から時間あるんだから、税理士試験をもう既に受けたことがある人に絞ろうと。学生のうちに実際に試験を受けているなら、本当に税理士を目指しているんだろうと思ったので、それに切り替えました。
のぞクマくん
言葉ではなく、実際の行動で判断するということですね。
清水さん
そうそう。実際に受験したという事実があるかどうか。それは大きな判断材料になりますね。

また、二次面接で清水氏が「いいな」と感じる瞬間についても、具体的なエピソードを語ってくれた。

のぞクマくん
面接で「この人いいな」と感じるのはどんなタイプですか?
清水さん
質問に対して、全然違うあさっての回答をしてしまう人は、やっぱり厳しい。逆に、こちらが投げかけた質問にしっかり受け答えして、会話のラリーが続く人。これが大事ですね。普通に質問してるだけなのに、こっちが想像していなかった角度で返してくる人もたまにいて、そういう人はいいなと思います。

質問に対して的確に応答できる、会話のキャッチボールが成立する——それが清水氏が大切にする採用基準のひとつだ。

勉強を仕組みで支える——スケジュール共有と科目合格お祝い金制度

採用と並んで力を入れているのが、スタッフの育成だ。C Cube コンサルティングでは、税理士資格の取得を全力で後押しする仕組みが整っている。

同社の育成の核心は「見える化」と「啓蒙」だ。勉強の内容自体を教えることはできないが、勉強する環境と意識を組織全体で整えることに注力している。具体的には、全スタッフが共有するスケジュール表に専門学校の授業日を記入させ、「学校がある日は仕事を回さない」という文化を浸透させている。

のぞクマくん
スケジュールを全員で共有するんですね。それはどんな効果がありますか?
清水さん
書いた以上やれと、こちらも言いやすいじゃないですか。「あれ、今日学校じゃないの?授業じゃないの?」って言いやすいでしょう。それに現場のスタッフも、この日は誰々君が学校だと分かるから、仕事を渡さない。
のぞクマくん
残業についても、若いスタッフには意識的に声かけをされているとか。
清水さん
うちは6時が定時なので、7時を過ぎていると「あ、今日随分残ってるね」って軽く声をかけるんですよ。これも一種の啓蒙ですね。

さらに、科目試験に合格した際には、その年の専門学校の授業料(1科目あたり約20〜25万円)を全額お祝い金として支給する制度も設けている。

清水さん
受かったその年、合格した科目の授業料20万か25万を、いわゆるお祝い金としてお出しします。
のぞクマくん
勉強する人にとっては、本当にありがたい制度ですね。
清水さん
ぜひ頑張って合格してほしいと思っています。

現在、同社は総勢46名(正社員32名、パート14名)。うち税理士が9名、税理士試験受験者が18名という構成だ。清水氏によると、この資格保有割合は会計事務所の中でも相当高い水準だという。

5年後のバトン——セミリタイア宣言と次世代リーダーへの期待

今年65歳を迎える清水氏は、65歳でのセミリタイアを毎年スタッフに宣言し続けている。その背景には、顧客の世代交代という業界全体の潮流への読みがある。

清水氏が引退を決意する理由は、単なる引き際の美学ではない。顧客である中小企業の経営者が世代交代を迎える中、若い後継者に対して60代の税理士がいつまでも担当し続けることへの違和感から来ている。

のぞクマくん
なぜ65歳でセミリタイアを決めているんですか?
清水さん
次の社長が40前後の若い経営者だとして、私のような60、65の税理士がいたら、どうですか。私がどんなに優しく「社長、大丈夫ですよ」って言ったって、やっぱり距離を感じてしまうと思うんですよ。
のぞクマくん
それは確かに、次世代の経営者には刺さりそうです(笑)。
清水さん
世の中で言える人って、多分私くらいしかいないんですよね。「社長、もうそろそろですよ」って。他の事務所を見ていてもそう感じることがあって、それを言えるのが私くらい。だって清水だってお前、現役じゃないって言われたら、「いや、私は65でセミリタイアにして、こういうやり方でやっていますよ」って胸を張って言いたいんですよ。

次のリーダーとして期待しているのは、現在40歳になったばかりのスタッフだ。5年後には油の乗り切った45歳となり、周囲の30代・40代とともに新体制を築いていく絵を描いている。

清水さん
私がいなくなる前提で、もうそろそろ考えなさいという言い方を今はしています。それが大きな5年後の大転換ですね。

編集部まとめ

今回の取材で印象的だったのは、清水氏の言葉の一貫性だ。「決めたら動く」という21歳からの性格が、30歳での独立計画、42歳の入院後の組織改革、そして65歳のセミリタイア宣言まで、すべてに通底していた。失敗や危機を「やらかし」と笑い飛ばしながらも、そこから学んだことを組織の仕組みに落とし込んでいく姿が、約30年の成長の原動力なのだろう。

  1. 税理士法人 C Cube コンサルティングは、21歳から逆算して設計された「30歳独立」計画をほぼ予定通り実行した清水努氏が1996年に銀座で創業した事務所だ。
  2. 清水氏は最大顧客の自発的な切り離しとICU入院という2つの大危機を経て、「人に任せる」組織運営へと転換した。
  3. 採用基準は、新卒は学生時代に税理士試験を受験した実績を原則とする方針に刷新された。面接では会話のラリーが続くかを重視している。
  4. 育成面では専門学校スケジュールの全社共有と科目合格時の授業料全額お祝い支給により、資格取得を組織ぐるみで支援している。
  5. 清水氏は65歳でのセミリタイアを毎年宣言し、顧客の世代交代を見据えた次世代リーダーへの計画的な権限移譲を進めている。

あなたの経営も、記事にしませんか?

掲載無料。話すだけで、御社の魅力が記事になる。

掲載希望はこちら →

  • URLをコピーしました!
目次